HMペクチン(High Methoxyl Pectin)は植物原料から抽出されたペクチンを脱エステル化することにより製造されます。
エステル化度(メチルエステル化されたガラクチュロン酸の割合)が50以上のものをHMペクチンと呼びます。

HMペクチンゲルの基本構造
HMペクチンの主なゲル構造は、ヒドロキシ基やカルボキシル基間の水素結合と、メチルエステル基間の疎水的な結合により形成されています。

HMペクチンのゲル化条件
ゲル構造の形成には、分子を十分に近づける必要があります。
そのために以下の2つの条件が必要です。
1.糖度55%以上
糖度が上昇すると水中のペクチン濃度が上昇し、分子同士の距離が近くなります。

2.pH3.5以下
pHを低下させることで、HMペクチン中のカルボキシル基のイオン反発が抑制され、さらにペクチン分子同士の距離が近くなります。

これらの条件が揃い、分子同士が十分近づくことでHMペクチンのゲル構造が形成されます。

HMペクチンのゲル構造は、条件が整った状態でゲル化温度以下になることで時間をかけて徐々に形成される特徴があります。
以下の画像は、エステル化度の異なる2種類のHMペクチン溶液にクエン酸を入れ、攪拌2分後の様子です。

左はゲル化しているのに対して、右はまだ柔らかい状態です。
このように、エステル化度が高いほどゲル化性が強く、ゲル化速度も速いです。
HMペクチンの特性
HMペクチンにはタンパク質の凝集防止効果もあります。
カルボキシル基のマイナスチャージにより、タンパク質中のプラスチャージと結合できます。
そのため、タンパク質の凝集防止にはエステル化度の高いもの(70%以上)が効果的です。

乳タンパク質のカゼインはpH4.6付近に低下するとプラスチャージが増え、ミセル間の反発が弱くなり凝集します。
ペクチンを添加することで、カルボキシル基のマイナスチャージによりカゼインに吸着して、表面をコーティングし凝集を防止できます。

以下の画像は無脂乳固形分1.0%の乳飲料で、左がHMペクチン無添加品、右がHMペクチン添加品です。
それぞれにクエン酸溶液を添加しpHを下げ、攪拌した時の様子です。

クエン酸添加1分後には、無添加品は乳タンパク質が凝集して分離が起きています。
HMペクチンゲルや乳タンパク質沈殿の様子は、こちらの動画をご覧ください。
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